春が来たような穏やかな陽気、看板犬タロウはずっと寝ていました。起こしたらまだ眠そう。春眠、暁を覚えず。暁どころか昼を覚えずですね。やっと900株の剪定が終わりました。まだ先は長いですね。
『常識は非常識』有機栽培は美味しいの?
日本では有機栽培は安全で美味しいというイメージを持っている方が多く、これが『常識』になっています。有機農産物JAS規格では化学的に合成された農薬や資材、隣接地の農薬使用の圃場からの距離(栽培品種・農薬散布方法での違い)等により適応外としているだけで安全、美味しいというお墨付きではありません。マークを取得の有無にかかわらずに有機栽培は安全で美味しいというイメージを持っている方が多く『常識』になっています。ネットを見ると有機肥料、有機資材という言葉がよく使われています。このイメージのために使われているのでしょう。使っている栽培者もこのイメージで使っている方がいることでしょう。これが『常識』となっています。
野菜や果物を食べると「旨い」と感じることがあります。その反対に、申し訳ないのですが、これ以上食べたくないと感じたこともあります。同じ品種でも栽培者によって食味に違いがあるのも事実です。何がそうさせているのか、いろいろと調べてみました。農産物に含まれる「硝酸塩」(いわゆるえぐみ)が原因であると分かりました。硝酸塩<硝酸性窒素、硝酸態窒素、硝酸イオン、硝酸根とも言われますがここでは硝酸塩で統一>は、多くの農産物では根からアンモニア態窒素、硝酸態窒素を吸収して硝酸塩としてアミノ酸の材料となり体を作っている材料になっていきます。光合成により、たくさんあると立派な幹となり葉になり体を作っていきます。もっと他の要素もありますが「硝酸塩」に限り簡単に現すとこのような流れになります。ここで問題があるわけです。根でどんどん吸収して使われずに余ってしまった硝酸塩は植物体内に残ってしまいます。植物体には無害ですが、人が食べると食味が悪く、これ以上はいいですとなります。硝酸塩は有機肥料であろうと化学肥料であろうと同じです。化学肥料を使っても美味しい野菜を作っている方もいる理由はここにありますね。
肥料を与えると成長が早く、大きくなり農業の基本である収穫量を多くすることができるのも現実です。食味とは別次元ですね。痩せ地でいかに収穫量を確保するかを探ってきたのが農業です。ドイツ人が科学的に窒素肥料の作り方を発明して人類を飢餓から救ったのも事実ですね。過剰な有機・化学肥料が問題です。土壌と作物に合わせた施肥管理ができるかどうかですね。
日本では作物体内の硝酸塩については、話題にもならなく、また無頓着になっています。これが『常識』です。これを言い出したら現代農業の仕組みがひっくり返ってしまいますね。ところがEUでは1997年にレタス、ホウレンソウに規制値を設定しました。2011年に改訂して乳幼児向けのベビーフードなどは、この10分1の規制です。これは野菜の中に含まれる硝酸塩で乳幼児の死亡事故が多発したためです。
東京オリンピックの選手村の食材はどうするのかと調べてみると、日本の有機農産物JAS規格ではヨーロッパの方々は納得できないので、結局、JGAPを立ち上げて調達することになりました。いろいろな管理が含まれますが肥料管理が大事にされています。イギリスではレッドトラクター認証が設けられ7,8割の農家が入っていると言われています。圃場が固くしまってきて有機物を入れて豊かな土壌にしようという制度です。ここでも大事にされていることは肥料管理で有機物の種類と量が決められて過剰な施肥を防ぐために記録を要求しています。環境に優しい農業を目指し、硝酸塩の削減を狙っています。これが世界の『常識』です。日本の有機を使っていれば安全、美味しいと言うイメージは『非常識』であるという理由です。
ブルーベリーで考えると前回で書いたように有機物を微生物が硝酸態窒素まで分解する前にPEONというタンパク質様窒素で菌根菌の働きでショートカットされて吸収されるので美味しいですね。ところが有機・化学肥料を入れると硝酸塩という形で吸収されて食味に関係してくると考えます。
当園ではこんな理由で食味の追究から化学合成農薬、有機・化学肥料に頼らない『自然栽培』に徹しています。品種の評価はいろいろと書かれていますが、栽培方法、栽培者、栽培地によって食味が違ってくると思います。この『テロワール』については次回の『常識は非常識』で書きます。